善神ヶ森、陣ヶ森、前々司は、皿ヶ峰連峰に属する山山です。
皿ヶ峰連峰県立自然公園。
皿ヶ峰連峰は石鎚山から西へ発した山脈に属し、東温市と久万高原町との境を構成する山並みです。
直線で十数kmの間に、観光・ハイキング登山で賑わう皿ヶ嶺、エリア内最高峰の石墨山など、1200m前後の頂が居並んでいます。
(県立自然公園としての皿ヶ峰連峰は、伊予市の谷上山まで含まれます。)
山間には峠が、東から黒森、割石、白猪、井内、上林、赤柴の6峠あり、峰を道後平野と久万地方を結んでいます。
稜線上の縦走路は明治頃にはもう拓かれていました。
昭和30年代の登山ブームの頃には大学や高校の登山部がテントを背負って縦走訓練する姿も散見されました。
ブームが一段落後、しばらくは廃道状態に荒れていましたけど、近年、地元有志、登山愛好者らによって縦走路が再び整備されました。
ササ刈りや倒木の撤去など、定期的に行われています。
そのおかげで、西は引地山から東は割石東山まで、初心者でも縦走が楽しめる人気のエリアに生まれ変わりました。
全行程を一日で縦走することは不可能ではありません。
けれど、車で入山できる黒森、井内、上林峠を出入り口として、近隣の山山をゆっくり楽しむのがおすすめです。
そして、善神ヶ森、陣ヶ森、前々司は、6峠のうちの上林峠と井内峠を入退出路として縦走が楽しまれている山山です。
善神ヶ森と前々司は、町誌、村誌などの資料や登山ガイドなどの書籍によって表記のばらつきが多いです。
善神ヶ森のほかに、善神山、奥善神山、前司が森山、遅越山などがあります。
前々司あ、前々司山、前善神山など、いろいろに呼ばれています。
また、善神ヶ森と前々司の場所が入れ替わっていたり、混同されていたりもします。
いま、前々司とされている頂が、別の頂であるとするものもあります。
単純に、ガイドブック記載の写真の解説と本文とが異なっていることも。
現地の案内板に書かれた落書きや、個人が設置した山頂標などの間違いが混乱に更に拍車をかけています。
善神ヶ森は、明治頃の資料には「前司が森」と表記されています。
元来、地名に用いられる漢字は当て字な場合も多く、前司を同音の善神(またはその逆)とするようなことはよくあります。
道標にある“うなめご”は古い往来にあった“うなめ越”という古峠の音読みです。
遅越山は、三角点名の「遅越」からか、久万側に遅越という集落があることから、久万側で呼ばれている山名です。
前々司は、前司が森の“前”にあることから、前前司(または前善神山)となっています。
愛媛県立図書館で閲覧できる古地図“浮穴郡之図”(製作年不明)では、
“ぜんしヶ森”と書かれています。
当サイトでは、重信・川内・久万の旧境があった1253mの標高点が打たれているポイントを前々司としています。
前々司を「前善神」とすると、1253m標高点から北へ延びる重信・川内の旧境上にある特徴的なピークとする説もあります。
善神ヶ森周辺は、古くから入らずの森として大切にされてきました。
つい足を止めて見入ってしまうほど、生命力あふれるブナの森が縦走路を覆っています。
久万側は尾根まで植林が進んでいる所が多いですけど、東温側はまだまだ自然林が豊富に残っています。
背丈を覆うようなササの侵入を許したところが一部あるものの、全体的には緑あふれ、すがすがしい森林浴の縦走路となっています。
井内峠から善神ヶ森へ向かうと、山頂直下に「元気坂」の看板の立つ、急坂が待ち構えています。
尾根筋を単純にトレースしているために、胸を突くような登り坂になってしまっています。
下る場合も、滑落や尻餅、ヒザを傷める恐れがあるので、注意が必要です。
善神ヶ森頂上は縦走路から少し外れたところにあります。
井内峠隧道から尾根上の井内峠に登るための登山口は、トンネルの東温側、久万側の坑口、それぞれのすぐ脇にあります。
久万側の登山道は緩やかです。
東温側は急坂をまっすぐ登った後、肩幅ほどの踏み跡を滑落に気をつけて斜面をトラバースする必要があります。
少し遠回りでも疲れず、安全な、久万側からのアクセスがおすすめです。
陣ヶ森は、山頂手前にそびえるNTT陣ヶ森無線中継所がちょうどいい目印になっています。
松山市内からもピークを簡単に見分けることができます。
上林トンネルの久万側から上林峠に登り、山頂を目指します。
また、中継所まで保安用の道路を歩くこともできます(車は不可)。
陣ヶ森頂上も縦走路から少し外れたところにあります。
上林峠~井内峠間は、善神ヶ森、陣ヶ森、前々司のほかにも小ピークがいくつもあり、登ったり下ったりが繰り返されます。
自然地形を縦走する面白さを充分に満喫できます。
その一方で、地図上で測定するよりも高低差の分、距離が増えます。
そのため、終点の峠に車を先着、またはデポして縦走される方が多いです。
往復縦走の際は早めの入山を心がけましょう。
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